揺蕩うことば

忙しいなかでもなにか、自分の思考をアウトプットして残しておこうと思って

フィギュアスケートの採点表を見てみよう

スケート見たけど点数が思ってより上(下)だった!

演技構成点ってなに?芸術点じゃないの?

なんでジャンプを前半とか後半とかわざわざ言ってるの?

などなどの方向けの記事です。

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滑ってるのはかっこいいけどイケメンかというとどうなんだろうという人代表

 

 

さて大衆向けのメディアに出ませんがフィギュアスケート

採点競技であるからにはしっかり採点表が存在します。

 

それがこちら。

ババン!

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なんのこっちゃわかりませんね

 

これだけ出してばーっと解説するのは大変なので段階的にやっていきます。

 なお今回は長くてややこしい話をせざるを得ない部分があります。

技術的、競技としての側面のフィギュアスケートに興味(と時間)がある方はどうぞ。

 

 

まずこれがわかるとどんないいことがある

・点数が実際にどう付けられたか理解できる。

・その選手がどこで点を取っているか、失っているか具体的にわかる

選手の長所短所がわかる

他の選手と比較することで

フィギュアスケート観戦がもっと面白くなる

だと私は思います。

 

 

STEP0 略称を覚えよう

採点表がどうなっているの前にこれがわからないと

なんの技かすらわかりません

 

まずこの略称から覚えましょう。

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色分けの結果余計わかりにくくなった感がすさまじいですね。

 

さて赤枠のところに注目してください。左のほうです。

なにやら数字とアルファベットが並んでいますね。

上から確認しましょう。

1 4T<<

2 3A

3 CCoSp3p4

4 CCSp2

5 3Lz+3T<

6 StSq2

7 FSSp4

 

まず一番左の数字ですが、これは何番目がどの要素かというものです。

これだと最初の要素は「4T<<」で最後は「FSSp4」ということになります。

問題はその隣のあれやこれやです。

 

とりあえずジャンプを抜き出すと以下のものになります。

4T<<

3A

3Lz+3T<

です。

数字とアルファベットの組み合わせ(と記号がついていたりいなかったり)」

になっています。

このうち「数字」は「ジャンプの回転数」です。

そして「アルファベット」は「ジャンプの種類」です。

回転数はなんとなくわかるでしょう。

「4」がクワド、「3」がトリプルです。

 

となると気になるのはジャンプの種類。このようになっています。

T トゥループ

S サルコウ

Lo ループ

F フリップ

Lz ルッツ

A アクセル

ですので、先の「4T」は「クワドトゥループ」の略となります。

「3A」なら「トリプルアクセル」ですね。

そして「3Lz+3T」の「+」はコンビネーションのことです。

トリプルルッツからのトリプルトゥループのことでした。

 

だがしかしこれで終わりません。多分ここまで読んでくださった方は

気になってらっしゃるでしょう。

「<<」←なにこれ

これこそ選手が、観客が恐れる記号、ようは回転不足です。

 

一つの「<」これはアンダーローテーション

二つの「<<」これはダウングレード

です。

つまり「4T<<」は、「クワドトゥループのダウングレード」

「3Lz+3T<」は、「トリプルッツからのトリプルトゥループのアンダーローテーションへと繋げたコンビネーションジャンプ」なのです。長い

こんなんいちいち書いてらんないのでこういう記号で表わされているのです。

右の赤枠はそれをすぐわかるようにしているだけです。

 

さあ、これでジャンプは完璧といいたいところですが

覚えていますでしょうか、ルッツとフリップの違い。

そしてそれを間違うと減点されるということを。

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こちらの採点表、赤線を引いたところです。

「3Fe+1Lo+2S」となっています。

「鉄原子が三つかな?」とか思ってはいけません。

この「e」というのが問題でして、早い話が

「ルッツ、フリップでのエッジエラー」を指します。

このジャンプは

トリプルフリップのエッジエラー、シングルループ、ダブルサルコウ」の

コンビネーションということです。

そして大変残念なお知らせですがこのエッジ問題はまだ続きます。

 

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「3F」ということでトリプルフリップなのはわかります。

エラーじゃないですね、やったー・・・・

 

なんでしょう右の「!」は。

ジャッジがあまりの出来に驚いたんでしょうか。

これは「アテンション」というもので、

「いやー君のルッツ(フリップ)のエッジ?あれねー微妙なんだよねー。ちゃんとアウト(イン)で跳んでるとはいえないんだけど、でもエラーってほどじゃないんだよねーごめんねー」というマークです。

ようは「エラーほどじゃないが明確に正しいエッジではない」ということです。

 

以上がジャンプの略称となります。

他のブログですと結構こういう表記をしているので、

採点表見ないにしても覚えとくと便利です。

 

ではスピンとステップに行きましょう。

というかスピンの勉強からなのですが。

 

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アップライトスピン

上体がまっすぐ伸びた上体のスピンです。

写真はその中でI字スピンとか言われますがその辺はとりあえずどうでもいいです。

略称は「USp」です。

 

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シットスピン

名前どおり座ったような姿勢で回るものです。

これも細かいポジションは置いておきます。

略称は「SSpです。

 

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キャメルスピン

水平にした状態で回るスピンです。

写真は個人的に大好きなポジションですがあんまり見ません。

略称は「CSp」となります。

 

以上3つが「基本姿勢」と呼ばれるものです。

さらにこれと別に

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レイバックスピン

背中を反らせたものです。高橋大輔がよくやっていました。

略称は「LSp」です

 

これが一つ別枠のようにあります。

このどれにも属していないものは「非基本姿勢」と呼ばれますがとりあえずいいです。

 

 

さあそれでは先ほどの表に戻りましょう。

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どれがスピンでしょうか。

「Sp」がスピンの記号なのでそれら全てです。抜き出すと

「CCoSp3p4」

「CCSp2」

「FSSp4」

 

さっきと言ってることが違うじゃねえか。

 

そうなんです。スピンもややこしいんです。

では解説に入りましょう。

実況、あるいは解説でこんなの耳にしませんか?

「コンビネーションスピン」

「シットスピンの脚換え」

「フライングキャメル」

 

これらがなんなのかというのが実は上のよくわからんアルファベットたちです。

 

まず

「CCoSp3p4」

これですね。

最初の「C」ですが、これは「キャメルスピンのC」ではありません

キャメルなら「CSp」となります。

じゃあなんなのかというと、「Change foot(脚換え)」の略です。

一つのスピンの中で途中で軸足を変えるのを脚換えといい、それをすると頭に「C」がつきます。

では次ですね。

「CoSp」ですがこれは「コンビネーションスピン」の略です。

上の基本姿勢のうち複数を一つのスピンの中で行うと自動で

コンビネーション扱いとなります。

その次の「3p」ですがこれはコンビネーションスピンのみに見られるもので

「いくつ基本姿勢のポジションをとったか」を表わします。

たとえばシットスピンとキャメルスピンを行えば、「2p」となり、

全て行えばこの「3p」になります。

そして最後の「4」ですが、これはスピンのレベルになります。

 

スピンとステップにはレベルB、1、2、3、4とどれくらい

工夫をしたかによってレベルが上がり(4が最高)点数も上がります。

ハイレベルの戦いではこのレベルを取れているかどうかで最後の結果に

響いてくるので、ジャンプが出来れば強いわけではありません。

レベルについては今回は省きます。

 

ということで「CCoSp3p4」このスピンは

「チェンジフットコンビネーションで3ポジションを取っていてレベル4」

というやたら長い要素名と内容を略したものになります。

 

また、「FSSp4」

これの「F」は「フライング」のことで、ジャンプしてスピンを始めた場合

「フライング~~スピン」となり、この記号がつきます。

 

 はいお疲れ様でした。

面倒くさかったですよね。

 

ステップは楽勝です。

最初の採点表で言えばこれです。

「StSq2」

要素としてのステップは性格には「ステップシークエンス」といいます。

これの略で、数字はスピン同様レベルです。

はい以上です。

 

……厳密にはステップという名称じゃないんですがステップみたいなものとして

コリオシークエンスという要素があります。これはフリーでしか存在せず、

またレベルがありません

 技術的なことはそんなに見ないから音楽を好きに表現してよ的な要素です。

こちらも一つしかありません。

「ChSq1」

レベルは1固定なんですが特にいらないので来シーズンあたり表記消せばいいんじゃないでしょうか。

 

やたら長い略称が終わりました。

いよいよ採点の中身に入ります。

 

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STEP1 基礎点ってなんだろう

 

実況で「基礎点の高いジャンプ」のようなフレーズを

聞いたことがあるかもしれません。

フィギュアスケートの技の採点は全て

「技の基礎点+GOE」です。

 

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水色(と認識できる色が複数あることに今失敗を覚えています)の枠

「Base Value」と書かれた欄に注目してください。

これが各技の基礎点です。

ここにあるのは諸々係数をかけた上での値なのでそこは気をつけてください。

「4T<<」のところ、「4.30」となっていますね。

なんでクワドで他のジャンプより点数が低いかというと

ダウングレードのため一つ回転数の少ないトリプルトゥループの点数が

与えられるためです。

「3A」はしっかり決めたので「8.50」となっています。

 

で、問題は「3Lz+3T<」です。

まずコンビネーションは基礎点がそのまま加算されます。

よってルッツとトゥの合計点……なのですが、

トゥがアンダーローテーションのため本来の7割になります。

そして数字のとなりになんか「x」こんなのありますね。

これは演技後半のジャンプは基礎点が1.1倍になる

というシステムの対象になっていることを表わしています。

この仕組みのためにジャンプを前半に持ってくるか後半に持ってくるかで、

体力やプログラム自体の良さと、基礎点のボーナスの間に悩むという

問題が発生します。

 

スピンステップも同様です。種類とレベルによって基礎点が変わります。

 

 

 

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STEP2 GOEとは

 

よく「出来栄え点でプラスが云々」って聞きますよね。アレです。

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先ほどの基礎点の右、GOEの欄を見てください。

あとその更に右の薄い色の枠、の上半分もご覧ください。

 

数字しかねえよ

 

と思われるかと思いますが、これが実際にジャッジによる要素の評価です。

GOEの算出方法は、

①ジャッジ9人がそれぞれの要素に対して「-3~1,01~3+」の評価を下す。

②その中の最高値と最低値を一つずつカットする。

③平均値を出す。

④技毎のGOEの点数に換算する。

という流れです。

 

例えば上の「3A」ですと「1」が2つ、「0」が7つのため、

最高の「1」を1つ、最低の「0」を1つカットします。

 

「1」が1つ、「0」が6つになりましたね。

 

これの平均値を出します。

 

その後「3AのGOE」に変換します。これは技毎に「このジャッジのGOEなら実際の点数としてはこれだけプラス(マイナス)」と決まっています。

 

で、それがGOEの列にある「0.14」なのです。

そしてこのGOEと基礎点の合計が

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一番右のオレンジの枠です。

「Scores of Panel」

として出てきています。

「3A」なら基礎点8.50にGOEの0.14が加算されて「8.64」になっています。

基礎点と実際の点数の一番下はそれぞれの合計です。

 

このGOEですが、「こういうミスのときはこれくらいマイナス」

「こういうのがプラスになる評価対象」というのがしっかりありまして、

「悪いところもちょっとあるけどいいところ数えたら結果プラスマイナスゼロだね」

となったり、「このミスしてるからジャンプ自体は綺麗だけど必ず-3だね」

とかいう風に決まります。主観といえば主観ですが、ちゃんと基準があります。

 

以上が技術点の簡単な解説になります。

別にこれを無理して理解する必要はありません。

そんなことより演技を見ましょう

競技として好きになればそのうち覚えていくと思いますし。

 

 

しかしながらこれで終わらないのがフィギュアスケートの採点です。

 

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STEP3 芸術点は存在しない

 

さすがに最近聞かなくなりましたが、現行採点システムの前に、

6.0制という、技術点と芸術点を6.0満点で採点する方式を取っていました。

荒川さんが金メダルを取ったトリノ五輪の前の、ソルトレイクシティ五輪

のあとに作られました。が、私が見始めたのはトリノ以降なので

すみませんそっちは詳しくないです。

 

で、なら今は芸術的、表現力の勝負はないのかというとそんなことはありません。

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左下の緑枠を見てください。

Program Compornentsとあります。

演技構成点のことです。

こちらは5つの項目に分かれていまして、

スケート技術(Skating Skills, 略記号:SS)

要素のつなぎ(Transitions / Linking Footwork, 略記号:TR)

動作/身のこなし(Performance / Execution, 略記号: PE)

振り付け/構成(Choreography / Composition, 略記号: CH)

曲の解釈(Interpretation, 略記号: IN)

というカテゴリーがあります。

 

演技構成点というだけあってプログラム全体の採点を行っています。

これをしたから何点、これがあるから何点、というものではありません。

項目見るとわかりますが、「芸術点」はありませんね。

「表現力」として言えるとすると、下の三つの項目でしょうか。

 

でこれの採点ですが、

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中央先ほどGOEの確認をした部分の下半分をご覧ください。

これまた色々並んでいますね。

各ジャッジが5項目に対して

「10.00満点で0.25刻み」の採点をしています。

 

ここから実際の点数になるのはGOEと同じです。

①最高値1つと最低値1つをカットする。

②残った点数の平均値を算出する。

③カテゴリーごとの係数をかける。

 

3つ目が少し違いますね。これについては採点表の

演技構成点の欄とジャッジの評価の間にある

Factorの部分が関係しています。

②で算出した値にこのFactorを掛けたものが実際の点数として、

右のオレンジの枠にかかれています。

 

この係数ですが

男子ショート     1.0

男子フリー      2.0

女子・ペアショート  0.8

女子・ペアフリー   1.6

アイスダンスショート 0.8

アイスダンスフリー  1.2

となっています。項目による差はありません。

アイスダンスは一部項目が異なりますが特に気にするようなものではありません。

 

 

ということで以上が演技構成点になります。

それでは最後に実際に採点表を解読してみましょう

 

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STEP4 フィギュアスケートの採点表を見てみよう

 

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2015年スケートアメリカの無良のショートの採点表です。

ちなみに採点表のことは「プロトコル」と呼びます。

 

では順に行きましょう。

まず左上、

Rankは順位

Nameは名前

Nationはどこの国の選手か

Starting Numberは何番滑走か

を示しています。

この場合、

「ショート10位、名前はタカヒト・ムラ、日本の選手で10番滑走」

となります。

採点のほうに入ります。

 

実施された要素と基礎点とGOEの加減算は

   要素     基礎点       GOE   トータル

1 4T<<    4.30  -2.10  2.20

2 3A                  8.50        0.14        8.64

3 CCoSp3p4     3.50        0.29  3.79

4 CCSp2           2.30        0.07       2.37

5 3Lz+3T<        9.90 x      -0.70     9.20

6 StSq2             2.60        0.57      3.17

7 FSSp4            3.00        0.43      3.43

       34.10                   32.80

 

各要素の名称についてはSTEP0である程度解説したので

そちらに戻ってください。

 

演技構成点を見てみましょう。

ジャッジ一人ひとりの採点は省きます。

スケート技術     7.89

要素のつなぎ     7.50

動作/身のこなし   7.82

振り付け/構成    7.86

曲の解釈            7.79

これらにFactor1.0を掛け合計したものが38.86

 

最後です。

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右上の枠が実際の点数です。

Total Segment Scoreが全体の合計点。

Total Element Scoreが技術点の合計。

Total Program以下略が演技構成点の合計。

 

最後のTotal Deductuionsは減点の合計です。

ここに数字が入っているとしたらほとんどは

転倒1回につき1.0の減点

というものだと思います。

 

転倒はまず「転倒に対しての1.0減点」に加え、

(ジャンプなど要素に関わるなら)「GOEが-3」という

採点をします。

そのため実際は

「ジャンプの基礎点 - GOEの-3換算分 ー 転倒の減点」

となりますので4.0は失うと考えて大体合っています。

今季からクワドのGOEが「-3」だと換算されて実際の点数では「-4.0」

になるため、もし4Tの転倒となると、合計5.0を失います。

 

今回彼は減点がありませんでしたので、0.00となっています。

 

 

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さてこれでプロトコルの解説はとりあえず終わります。

冒頭に書きましたが

・点数が実際にどう付けられたか理解できる。

・その選手がどこで点を取っているか、失っているか具体的にわかる

選手の長所短所がわかる

他の選手と比較することで

フィギュアスケート観戦がもっと面白くなる

 

ための情報がたくさん詰まっています。競技として見る場合、

難しいかもしれませんが採点表もちらっと見てみてください。

ちなみにこの採点表、一番入手しやすいところですと

sports.yahoo.co.jp

こちらから

「日程・結果」→「大会名」→「採点表」

とクリックするとカテゴリー内の全選手のプロトコルがPDFで

入手できます。

スケアメは既に全て出ているので確認してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

ところでスケアメショートの感想書いたらあれだけでpv100近く増えたんですけど

これは日曜ゆえなのかみなさん感想記事をググッてるのかなんなんでしょう。

明日明後日辺りでフリーの記事もアップできたらと考えています。

 

長くわかりにくい記事となってしまい申し訳ありません。

読んでくださりありがとうございました。