揺蕩うことば

忙しいなかでもなにか、自分の思考をアウトプットして残しておこうと思って

全日本で羽生が見せた強さと驚きの女子中学生

卒論を提出できたので年の瀬にブログを書く余裕が戻ってきました。

やることはいろいろあるんですけどね。
 
 
男女シングルについて少し書こうと思います。
合計3回の転倒にも関わらず圧倒的な強さを見せ付けたエース羽生。
そしてロシアが席巻するかと思われた女子での日本の力。
主にこの二つです。
 
 
 
1.なぜ羽生は280を超えたのか
 
 採点表についての記事がよく読んでいただいているため、
読者の方のなかでも今まで採点はよくわからなかったけど
なんとなく色々あることはわかった的な方が
いらっしゃると思います。
 
 現行ルールにおける重要な要素に、
技の基礎点だけでなくGOEとPCSがあることは
ちょっと検索すればでてきます。
羽生が強い理由がまさにここにあります。
もちろん基礎点が世界トップクラスなのもそうなんですけど。
 でもフィギュア普段見ない人、全日本見てて不思議に思いません?
 ショートで最初のジャンプを転倒したのに100点を超える。
フリーで2回転倒して他にも微妙なジャンプがあったのに180点を超える。
合計280点台なんてそうそうでませんよ。
(ナショナルという点はここではおいときます。)
 
 
 繰り返しになりますが、その理由がGOEとPCS、
これを確実に取ってくる彼の異次元級の強さです。
 転倒の影響はもちろんありますが、それ以外で他の選手が取れないような
得点を取っているため、合計があそこまで伸びています。
特にPCSはシングル初の10.00満点の項目を出すなど隙がありません。
正直最近インフレ気味なので正確に演技の評価がなされているか
微妙なところはありますが、
彼が現行ルールで一人で突っ走っていることに変わりはありません。
 
 
 
 一応注意しておきたいこととして、まず国内選手権でどんな点を取っても
それはISU(国際スケート連盟)の公式成績になりません。
そりゃ国際じゃないんだからそうですよね。
それ故か採点が甘かったりします。
が、そこは国際試合に景気良く送りだすとか何とかそんな感じに
捉えればいいかと。
逆に同程度の演技に国際試合で点が出なくても騒がないようにしませう。
 
 あと毎年ルール改正が行われる競技ですので、羽生の持つ330点も
完全に歴代最高っていう扱いではありません。
ISU的には参考値なので。今後あれ以上、以下の点数の演技があっても
一概に点数分優れてるとか
劣っているということにはなりません。
 
 
 
 
 
2.白岩が見せたジャンプ その能力と判断力
 
 日本女子シングルのジュニアエースといえば樋口新葉です。
爆走しながら質のいい要素を決めていくことで、
昨季はジュニアグランプリファイナルでも銅メダルを獲得しました。
また本田真凛も話題性実力兼ね備えています。
今季のファイナル銅メダリストは彼女でした。
 
 
 しかしこの二人だけでない、全日本でその強さを見せ付けた選手がいます。
14歳の白岩優奈選手。
実況で10種の3-3を跳べると言われていましたが、
この時点で相当すごいです。
アクセルが現役で浅田とリーザ(トゥクタミシェワ)しか跳べないため
これはおいておくとして、残り5種からセカンドの選択肢、
トゥループとループがどちらも跳べるということです。 
 セカンドループは世界的に珍しく、これが試合で組み込めたら強力な武器です。
RPGで言えば終盤の雑魚を一撃で落とすくらいでしょうか。
 さすがに3Lz+3Loとかはまだ先でしょうけど。
 さらっと触れましたが5種からトゥループに繋げられるのも強みです。
ルッツからもフリップからもいける選手は3Tでもなかなかいない。
 そしてなにより全日本で驚いたのが彼女のリカバリー。
そもそもの予定構成は冒頭の3Sから3Loを跳ぶ予定でしたがこれができなかった。
次善策としては次の3Fだと直後なので3Loあたりに付けるのが現実的だと思います。
しかし彼女がとったのは3連続を3Lz+3T+2Loにすることでした。
しかもこれでGOEがプラスです。
+3出してるジャッジは出しすぎですが質はほんとによかった。
 
 
 なんか平然とやってましたが、荒川さんも驚いていたように尋常じゃない選択です。
まずもって3Lz+3Tが難しいです。
世界中の女子シングル選手が跳べたら強みになると
考えているコンビネーションです。
そもそも単独のルッツ自体回避する選手だっています。
ショートは特にそうです。
それを演技終盤に行い、2Loも跳ぶとか意味わかんないレベル。
 
 しかもこれ予定演技じゃないんですよ。
序盤の失敗を取り返すために一番難しいことをする度胸がすごい。
べた褒めになりますが、加えてシニアのフリーはジュニアより30秒長く、コレオシークエンスもありません。
昨季はノービスクラスの選手で今季がジュニア本格参戦のシーズン。
当然全日本シニアだって初めてです。そこで最終グループに入りました。
あの構成は彼女があの日初めて試合で行った構成で、
大会の空気や前後の選手含めてそれまで未知であった時間です。その未知の中で
シニアでも見られないような技を、
リアルタイムの判断で選択し、決めきったのがあの三連続なのです。
 
 ロシア女子を見ればわかるように、
どうしても体型変化というのは特に女子選手にとって問題となります。
彼女が今後もジャンプの質を維持できるかどうか、
これは簡単ではありません。
しかしスピンのレベルも取れており、
表現の面でもジュニアの中で決して劣っていません。
 
ジュニア一年目でグランプリシリーズ二勝、
ファイナルこそ5位でしたが全日本ジュニア、
そして全日本と素晴らしいパフォーマンスを見せた彼女が、
将来日本代表として世界でメダルを取ることは、決して夢物語ではないのです。